半農半Xしている私が農業と輸入販売で経営が安定するまでにやったこと【前編】
【横浜からI・Uターンして有機農業とECサイト運営をしています】
私たちFarm Rootsは岐阜県恵那市笠置町という谷あいの山の中、家族で有機農業をしている農家です。横須賀出身の農場長・アッキーと岐阜出身の妻・べんの夫婦ふたりでやってます。
↑こんなお野菜詰め合わせを、都会の方中心に宅配しています。
この記事では、岐阜に移住しようぜってなって、そこからどんな変遷をして、半農半Xで食べていけるようになるまで、どんなスキルを身に着けていったかを具体的に書いていこうと思います。
【STEP1.登山好きが高じてアウトドアショップに勤務】
(写真左が妻。右は叔母w)
私たち夫婦は2010年、アウトドアショップに勤めているときに知り合いました。
農場長・アッキーは富士山を7回も登ったり、テント縦走するくらいの山好きで、本業のジャズドラマーをするかたわらアウトドアショップに勤めていました。
笠置町出身の妻・べんは関東に出てきてからというもの自然が恋しくなり、山登りを始めたくて同じアウトドアショップに勤めることになり、アッキーと知り合いました。
(ちなみに私たちは自由を愛するフリーターでした(^O^)/スキルもへったくれもありません!)
働いては2人で山へ行き、働いては山へ行き、を毎週・毎月繰り返すうちに、自然と寄り添う暮らしに思いは募りました。何回山へ登った後のことでしょうか、「あれ…これって山に住んだ方がいいんじゃないの?」と思い始めた私たち。そしてできることなら山に近いところで農業したいね、と語り合いました。
そして2012年、私たちは人生の次のステップに、移住という選択をしようとしていました。
その時、ベンは農業というものにドはまりしていたので、たくさん農業関係の書籍を買い込んでいましたね。
【STEP2.ジンバブエにワークキャンプへいく】
またこの頃、もともと国際協力に携わりたかった妻・ベンの提案で、アフリカ・ジンバブエの農業ワークキャンプに行くことになりました。
この経験も私たちのターニングポイントとなりました。圧政のもと生きるジンバブエ人は、確かに技術や資本さえありませんが、誇り高い民族でした。貧しくてもジェントルでユーモアあふれ、利他的に心豊かに暮らしていました。経済的にみると厳しい生活を送るジンバブエ人から、農業の楽しさや辛さ、そして互いに支えあうことの尊さを学びました。想定していましたが、短期間でなんのスキルもない私たちがジンバブエに対してできることなどありません(断言)。私たちがボランティアに行ったというより、人生を教えてもらいに行った感じでした。詳しくはこちらのジンバブエのエントリー記事を‥‥。
【アグリツーリズムがしたい、という夢ができた】
(出典:mabuda farm)
ジンバブエでワークキャンプを終えた後、レンタカーを借りて南アフリカを二人で旅したのですが、旅先のスワジランド王国で、素敵すぎるFarm Hotelに出会いました。
そこは広大な敷地に牛や馬が飼われており、野菜もたくさん作っている。コテージは1棟1棟離れて建っていて、朝にはそこで採れた牛乳がふるまわれます。おしゃれな室内装飾、優しいオーナー。何ヘクタールもある敷地にはお散歩コースが用意されており、森の探検もできる。それでなんとひとり1泊2500円程度…(アフリカ値段ですね!)。この世の楽園のような心地よさでした。
もともと、農家民宿などに興味があったベンでしたが、アフリカの壮大すぎるアグリツーリズムには度肝を抜かれました。そしてそんな心地よいなか、ふたりで将来のことを妄想しました。
「有機農業をして、アグリツーリズム(農家民宿)してさ、ほんで町おこしのイベントなんかしてさー。鶏飼ってさあ。山羊飼って、乳しぼって。そしてジンバブエから研修生呼ぶの。」
そしてアフリカから帰ってくると、ちょうど「恵那市ふるさと活性化協力隊」(地域おこし協力隊のようなもの)の募集がありました。
ベンが冗談で「やってみない?」と言いました…。
山に近いところで農業…できるじゃないか!そこで思い切ってアッキーとベンは恵那市に飛び込んでみることになったのです。
【STEP3.ボラバイトにいってみるの巻】
少しでも農業の知識を学びたかったベンは、住み込みボラバイトに行くことにしました。
しかしベンが思い立った時は3月で、有機農業の方が作付けなど本格活動するちょっと前。行きたかった少量多品種の有機農家にボラバイトに行くことはできず、しかたなくA牧場へ行くことになりました。
このA牧場の労働がすごかったのです!!!調べて分かったのですが、「キツイ・超ストイック」で知られる有名な牧場でした。こだわりがあるので美味しい牛乳ができますが、とにかく労働時間が長くてキツイ!
なんと週6で17時間拘束の14時間労働。しかも、14時間は全力疾走です。鍬やスコップを手に牛糞をマッハで掃除しまくるのです。バスケットボールの試合を14時間やっているようなものです。週6で。もうびっくり。
筆舌に尽くしがたい苦しみを耐えた2か月間でしたが、明日で牧場を出るという夜、牧場のおかあちゃんに言われました。
「ボラバイトで何人もここに来たけど、ちゃんと働きとおしたのはアナタがはじめてよ」
…
‥‥( ;∀;)はよ言ってくれー!
10人中10人、誰しも1週間で辞めちゃうくらい辛い環境だったそうです。
もちろん嫁に来ないか、と言われました(笑)。
でもその言葉をいただき、ベンは「私って体力ある?!農業に向いてるかも」と自信を持ったのです。
2か月の労働で見事ベンの腹筋は6つに割れていました。
それから1年くらい指がしびれてましたけど、あの辛い期間を耐えたという自負があってこそ、いま農業が出来ているのだと思います。どんな作業をしても「A牧場よりマシ」と思えるからw
いや、人は良かったんですよ、人は。
【STEP4.地域おこし協力隊で町おこしを学ぶ3年間】
地域おこし協力隊でアッキーが入ったのは恵那市岩村町という古い城下町の街並みがいまだにまるっと残っている重要伝統建築物群のまち。任期は3年です。
城下町が昭和に入ってそのまま商店街になっていたのですが、いわゆるシャッター街のような感じで、なかなかの閑散具合。それを町おこししていこう!というプロジェクトがありました。
大学で社会学をほや~んと学んでいたアッキーは当時の知識を引っ張り出したり、新たに町おこしの手法を独学で学んだりしながらイベントの企画などに取り組みました。
ドラムはもう諦めようと覚悟していたアッキーでしたが、一度「酒蔵でJAZZライブ」を企画したところ、これが大当たり。
「自分でイベントすれば、JAZZを啓蒙できるしクラブで演奏するより儲かる」
と手ごたえを感じました。
その後ドラムの仕事は絶えず、恵那市内の料亭でライブをしたり、岐阜の他の地域から行政経由のライブ依頼があったりと、意外にも音楽的には充実した毎日でした。
地域おこし協力隊の間に身につけたこと
- マネジメントのさわり部分
- コンセプトメイキング
- チラシ作り
- ファシリテーションのさわり
- イベント企画
- 地域間の調整役
これらをトライ&エラーを無限に繰り返しながら、話を聞いてくれないおじさんたちの間に入って、まちづくりデザインをするわけです。
いままで社会学を行使したことのない人間が、急に実践に入るんだから、そりゃもう大変。アッキーは任期終わり間際なんかはもう毎晩うなされていました。(笑、えない。)
【STEP.5 畑を借りて家庭菜園をはじめた…が】
岩村町にいる間は、田園風景に住むわけではなく、城下町の中の長屋を改装した家に住んでいました。ちょっと理想とは違う生活でしたが、幸いなことに大家さんが家から歩いて3分のところに畑をもっていて、その一画で小さな菜園を耕させてもらえることになりました!
最初は、もちろんアッキーとベンの二人で菜園に取り組んでいましたよ。
「はじめての家庭菜園」みたいな本を畑に持って行って読みながら作付けしたり。植え付けなどわからないときは大家さんや近所のおばあちゃんに聞くと、とっても親切にみなさん教えてくださいました。
でも、だんだんアッキーの町おこしの仕事が忙しくなってきました。平日は夜会議、休日はイベント、そのあと酒豪の民に囲まれつつ飲み会…。
というわけで菜園の管理はベンひとりでほとんどやっていました。猫の額ほどの菜園でしたが、機械なしで女一人で様々な野菜を育てるのは大変でしたね。
【前編まとめ】
ここまでビジネスと農業スキル0のアッキーとベンがいろいろやってきて、あとに生きてくるなと思った経験&強みは…
- フリーターだからこそ!のフットワークの軽さ
- 牧場での過酷な労働経験
- マネジメント・コンセプトメイキング
- イベント企画
- 家庭菜園
もし今、なにもスキルがないから半農半Xするのは無理かも…とあきらめそうな方がいたら、それにはNO!を言いたいです。
私たちにあったスキルって、
アッキー:ジャズドラム。いちおう、大卒。htmlちょっといじれる
ベン:イベント企画が好き。高卒。イラストが描ける。PCはOfficeすら危うい
てなもんですよ。ないようなもんです。今思うとヤヴァイですね。いや、ほんとこれだけしか無かった!!
もちろん、のちのちスキルは増えていきますけども。この3年後に農業&輸入販売で起業する我ら。大丈夫か⁉
だから、移住や半農半Xに不安を抱える皆様。心配しないで。こんなわたしたちでもなんとかなってますから!
でも、やたらと夢を信じることだけは、忘れないでくださいね。できないと思ったら絶対できない、っていうかやりませんから。
ちなみにFarmRootsのお客さん向けのブログはこちら。
続きは中編で。